受け継がれてきた伝統の製法でつくられる
こだわりの鰹節がここにある。
The establishment of Kyumasa is 1897 in Daio village, Shima.
There is dried bonito made with the traditional manufacturing method that has been inherited here.
久政では鰹節を加工する工程における燻し作業で、
『手火山式焙乾方式』(てびやましきばいかんほうしき)という
燻(いぶし)技術を採用している。
強い火力でじっくり燻し乾燥させることで、
旨味をギュッと閉じ込める、今では珍しい古い技術である。
現代の技術に比べると生産効率は落ちるが、
最高の美味しさを引き出すには、
この手火山式焙乾方式の他に方法はないという。
時代を越えても、この技術は百世不磨である。
一時期、久政では鰹節作りを止めていた時期もある。
しかし、この伝統の手法こそが、
これからの時代に必要であることに気づき、
平成23年に復活させた。
For some period, there is the time when he stopped the making of dried bonito in Kyumasa. However, he noticed that the time has come, then he brought back this traditional technique in 2011.
まず生の鰹を丁寧に捌き3枚におろす。
そして籠立て(かごだて)という作業で捌いた鰹の身を
ひとつひとつ丁寧に籠に並べ、大きな特製釜で鰹を煮る。
鰹の身が反ったり傷ついたりしないよう作業は慎重に行われる。
この煮釜の細部にもこだわり、
煮出した灰汁や脂分が鰹に付着しない構造になっているため、
臭みのない鰹節に仕上がるのである。
そうして煮上げた鰹を燻用のせいろに並べていく。
せいろも魚の身が焼きつかないよう竹で編まれたものを
黒くなるまで燻込んだものが好ましい。
ここから手火山式焙乾方式による燻し工程に移る。
手火山式焙乾釜も鰹節の燻に最適なよう細かく設計されている。
燻に使う薪は、伊勢志摩に多く自生する
「ウバメガシ」を利用している。
ウバメガシは密度の高い木材のため薪にすると火持ちがよい。
じっくり燻す鰹節に最適である。
さらに地元の素材を利用するため輸送コストもかからない。
焙乾は魚の大きさや種類により何度も行い、
作業は一ヶ月にも及ぶ。そして削りの工程に入る。
削り器の刃を合わせる技術も身につくまでに
10年はかかるという。
このようにして出来上がった鰹節は丁寧に削られ、
製品となり運ばれるのである。
ひとつひとつ手作業のため大量生産はできないが、
大量生産をせず必要に応じた適量を生産することは、
自然界の循環にとって最も大切なことであると、政吉氏は言う。
家電だけでなく、食分野でも利便性が高まった昨今、
家庭で一から煮出す鰹節出汁は面倒がられ、
手軽で便利な化学調味料を多くの人々が使うようになった。
しかし鰹節出汁にこだわり使い続ける少数の人々の為に
鰹節を製造しているだけではなく、
手間暇かけて鰹節出汁を煮出す
日本古来の素晴らしい食の価値を求めている。
その価値から離れた人々が食のライフスタイルを
もう一度取り戻すことを願いながら、
最高の品で勝負をかけている。
そして、良質の本物の鰹節を作るためには、
丁寧な手作業でこそ実現できるものと確信している。