2022年12月3日
丁寧に暮らす
多くのことが各家でなされていた時代に、醤油しぼりはそうではなく、醤油しぼり器もって、複数地域を回っていたようだ。大豆、麦、塩でもろみを仕込み、発酵させて、その醤油しぼり器で醤油を絞る。醤油しぼり器は各家にはなく、それを持って回る人がおり、広いところに機械をおいて、その地域の醤油をしぼるのである。遠くにいてもいい香りがしたそうだ。戦前の暮らしでは、麹はお店で購入することが多かったようだが、各家で麹箱をつかって麹を作っていた家もあった。干し柿は一日300個の皮をむき、それを4回行い、1000個ほど皮をむいた人もいた。手の限界がそのあたりにあるらしい。萩の枝で柿を刺すとかびない。柿の皮は干してたくあんと一緒に漬ける。甘味が出て美味しくなる。その柿の皮を七味唐辛子にしている人もある。採草地では火を燃すと、ワラビが出やすくなる。茅も同じように燃やしてから生えさせると長さがそろうため、茅葺屋根に使いやすくなる。手間をかけても直ぐに効果がでるものではないが、未来の暮らしには必須のことをかなり前から手入れする。このタイムスパンは丁寧な暮らしの基盤となっている。発酵や植物利用が主であった頃、彼らがどのように微生物や植物の現象を理解し、イメージしていたのだろうか。このような暮らしの基盤が、暮らし全体に与える影響は大きい。私たちの未来も暮らしの基盤をどうするのか、考えていく必要がある。