コラム33

2019年3月3日

利便性の壁

 

湯沢市で90歳ヒアリングを行った。湯沢駅周辺には、農業以外の商売を行っている人が多く住んでいた。彼らは野菜を育てるスペースと余裕がないため、野菜は店で購入し、しかし、漬物は自分でつけていたそうだ。この話には何かひっかかるところがあった。通常は便利な社会になるにつれ、依存型の暮らしに変わっていくものである。野菜は購入するが、手間暇かかる漬物は、購入しないのには何か理由があるはずである。90歳の方々と意見交換したなかで出てきたいくつか理由がある。一つは、漬物は保存食であり、豪雪地帯で雪に覆われる冬を越すためには、必要不可欠のものである点が挙げられる。しかも、11月くらいから3月くらいまでと長期にわたって食べていくものである。飽きないように、味も野菜も複数欲しい。そして、発酵食は自然環境の微妙な変化でも味が変わるもので、漬物づくりは楽しいものでもある。これらの理由により、野菜作りは手放したが、漬物づくりという不便は手放さなかったのかと想像する。