コラム15

2018年5月29日

感性をよみがえらせる

 

90歳ヒアリングとは、戦前の暮らし方をヒントに未来の心豊かなライフスタイルをデザインする方法です。それだけ言うと、みその作り方、オニヤンマの捕まえ方、草履の作り方という“知恵”に注目が集まるが、全く違う視点で学べることがある。それは感性の豊かさである。志摩の海女さんに、なぜ80歳まで海に潜っていたのか、と伺うと、それは海がきれいだから、と即答が帰ってくる。鹿児島のおじいさんに花見はどんなでしたか、と伺うと、桜が近くになかったので、春先に田んぼに咲く小さなれんげ草の花が一面に咲き乱れるときがある、その時に丘の上にかけあがり、上から一人で見下ろすという。蛍を捕まえたら家の持ち帰り、蚊帳の中に放して夜は綺麗な光を見ながら寝る。夜道が真っ暗でも、川の音、におい、風、などを頼りに灯りなしで、一人で家に帰ることができるという。農業に必要な牛を少し離れた村から借りてくる。農作業が終了したころ、再び、牛を返さなければならないので、分かれ際は寂しくて涙する。これだけ五感を使った暮らしは心の豊かさも多種多様であり、豊富に違いない。私たちに未来は知恵だけではやっていけない。これらの感性を呼び覚ます必要がある。