コラム6

2018年1月19日

自然に寄り添う暮らし

 

秋田市の水が豊富な地域で、近くの山から出る湧き水をその地域の各家の中を通して、共同利用するところがある。水道が通っていなかったころ、このような利用方法をしていた。自然に寄り添う暮らしの一つである。

ところが、この「家の中を通す」意味は便利さ以外にあるという。各家庭では子どもに、「下流の人に迷惑になるので、水を使うときは、すくって、使いなさい。」と教育するのである。湧き水は上流から下流に流れ、地域のみんなで利用しているので、そのまま何かを洗って水を汚してしまうと、迷惑になる。

このように自然に寄り添う暮らしは、自然を自由に使っていいわけではなく、持続的に地域で利用していく工夫がなされてきた。自然資源の利用の仕方を一つ間違えると、山に豊富な山菜やキノコなど食料も次の年に生えてこなくなる可能性もある。常に持続的に利用できる方法をコミュニティとして考えてきた歴史がある。

今、なぜこのような考え方が薄れてきたのだろうか。自然とコミュニティとの距離を再度近づけ、自然に寄り添う暮らしを体験しなければ、気づけないことなのだろうか。2050年に向けて真剣に自然と共生する心豊かな暮らしとは何かを問い続けなければならないと思う。そして、その上で、企業や行政はどのように社会を方向転換すべきかを考える責任がある。