コラム4

2017年12月5日

知恵の凄さ

 

資源を循環させて、心の豊かさを得る方法を知っているだろうか。今の社会では、無駄のない資源循環を検討する際に、心の豊かさについて考える人は少ない。

90歳前後の高齢者に戦前の暮らし方について聞き取り調査を行った。様々な地域で、その地域内で資源が循環していたことがわかる。例えば、灰汁を灰汁屋にためておき、鍋や板の間の洗浄に利用していた。食べかすや牛糞、さらに、人糞を肥料にしていた。風呂水を肥料に混ぜていた。豆の煮汁やフノリを洗浄に、クルミで毛糸を染めていた。煮魚の骨やウニの殻、ヒトデなどを植木の肥料にしていた。昔はどんなに着るものが傷んでも汚れても、布地は絶対に捨てなかった。だから納戸には、何かにしようと思って箱に取ってあるボロがいっぱいあった。

このような暮らしは、一見、平凡な田舎暮らしに見えるが、心の豊かさという観点で見ると、自然と共生する暮らしの知恵のすごさを思い知らされる。布地は絶対に捨てず、一つ箱を用意して、ためておいたというアイディアに着目していただきたい。様々な色のボロがたまってくると、汚れてもいい仕事着に縫い直したというのである。カラフルなボロがたまると、何を縫おうか、考える楽しみが生まれるのである。この箱一つで心豊かな暮らしに様変わりしているのがわかるだろう。分別だけすれば良しとする世界には想像もつかない心豊かな暮らしが広がっている。