コラム85

2021年4月6日

自然との関係の変化

 

私たちの暮らしは自然との距離が離れてしまったと思う。人と自然とのつながりをはかる指標として、研究の世界では「癒し」「親近感」「神秘性」「自然劣化に対する悲しさ」などが使われる。森の中を歩くと癒される。田園風景を見ていると親近感がわく。巨木を見ると神秘性を感じる。荒らされて放置されている山を見ると悲しくなる。おそらく、誰もが感じることだろう。これらをどの程度感じるかによって、自然とのつながり度合をはかるというものである。これらの指標が使われる前の時代に、人と自然に異なる関係があった。例えば、人は自然に感謝する、人は自然の技術を利用する、などである。自然に感謝したことがありますか、という質問をすると、かなり多くの人が「ある」と回答する。自然の技術を利用したことがありますかと質問すると、「ある」と回答する人は皆無となる。食事をする前にいただきますという発声は自然に対する感謝の気持ちを表している。多くの日本人は感謝していると思う。習慣化していないためか、自然の技術を利用している人は少ない。技術が何を指すかによるのだが、米のとぎ汁を肥料に使う、発酵食をつくる、稲の害虫を食べてもらう益鳥など、かつては自然そのものから、技術的な要素、システム的な要素も利用していたが、今の社会では利用している人は相当減ってしまったのである。