コラム89

2021年6月6日

物質循環の成り立ち~柿の副産物活用文化~

 

柿について、副産物活用文化が広がっている。東北地方では、昔、多くの家の庭には、甘柿、渋柿、イチジク、ビワ、スモモなどが植えてあった。柿がよくとれるところでは、例えば、甘柿、小さい豆柿、そして、干し柿もつくられた。皮を剥いてコロ柿にして干す。干し柿は高級なおやつであった。今のように紐にぶら下げるのではなく、ハギの枝に実を刺していって、実の並んだ枝を藁でタテにつなぎ、すだれのようにして、軒の下に下げる。稲刈りの最中の皮むきは大変だったそうだ。ある家庭では、漬物には甘漬・中漬・本漬と3種類あり、季節をずらして年中食べ、本漬は雪が降ったように塩と糠が入れ、甘みをつけるために柿の皮を入れてあったという。渋柿の塩漬けは、4斗も5斗もあるような大きな樽に漬け、小屋に貯蔵しておく。柿持ってこい、といわれて取りにいくと樽に氷がはっていたりする。それは塩いっぱいで甘味があって、おいしかった。そして、柿渋は、漁網の補強に使用されたり、廊下に塗られていた。長持ちさせるためである。柿の副産物は一般家庭でも仕事でも使われていたのである。これだけ恩恵が得られる柿の木は、なるほど多くの家庭で植えられていたわけである。