コラム91

2021年7月9日

ネイチャー・テクノロジー

 

ネイチャー・テクノロジーとは、自然界の生物の営みやしくみから、科学に基づきその技術的・システム的要素を学び、持続可能なライフスタイルやものづくりのかたちの構築に活かすという概念である。この概念は石田秀輝東北大学名誉教授により考案され、世界の中では独特なものとなっている。生き物に関しては、美しいから真似をしようという「バイオミミクリ」、素敵な世界を見て発想しようという「バイオロジカリー・インスパイヤ―ド・デザイン」、生物多様性を規範にする「生物規範工学」など言葉がそれぞれの地域で異なる言葉で研究や活動が進んでいる。このネイチャー・テクノロジーは、持続可能性の向上という概念が隅から隅まで強く貫かれている。例えば、トンボの羽の構造を分析し、その機能を応用した小型風車の開発がなされている。微風でも回転を始める風車である。これが実現されれば、子供でも扱える小型風車ができ、家の中の微弱で通常利用されていない風力を電気として回収し、利用する、「自らエネルギーをつくってつかうライフスタイル」が可能となる。自分でつくったものは大事にするものである。エネルギーに愛着が生まれる可能性もある。省エネ行動を教育する代わりに、トンボの風車のような道具を導入し、生活の中で省エネ行動を促す可能性がある。テクノロジー視点は、自然との関係構築という意味においては新しい関係のかたちである。本コラムではしばらくこのテーマを深堀していきたい。