コラム92

2021年7月25日

生物の凄さ-擬態から思うこと-

 

擬態とは、動物が攻撃や自衛などのために、体の色や形、動きなど周囲の物や植物・動物に似せることを言う。私が博物館で見て最も驚いたのがこの擬態である。枯れ葉に似たカマキリ、木の枝に似たナナフシなど信じられないことが起こっている。先日、土を扱う陶器職人の達人が、自然の凄さについて語っていた。どんぐりを植えれば、その木が何もしなくても生えてくるという遺伝子という設計図が既に埋め込まれていることは凄いことであるというのである。人は転んでけがをしても、自身の治癒力によって壊れた細胞は元に戻ろうとする。血管が詰まってしまいある部分に血液を運べなくなれば、新たに血管ができて血管がつながり、そこへ血液を運ぼうとする。人の意識とは関係ないところで単純な細胞の復元ではなく、その状況に合わせて意識とは関係なしに体が生きようとするのである。2020年に理化学研究所は、機能未知であった脳領域「前障(ぜんしょう)」が、大脳皮質の「徐波」活動を制御することを発見した1)。意識レベルや睡眠の調節を担う神経メカニズムの理解につながる研究成果である。意識は制御されているのである。体は意識を制御し、それによって人は意識的に自らの体の動きや生き物の営みの凄さに驚いている。

1) https://www.riken.jp/press/2020/20200512_1/index.html