コラム95

2021年9月5日

生物の凄さ-解決原理と生物事例-

 

ネイチャーテクノロジー創出システムの研究グループはBio-TRIZ Warehouseを構築した。これは暮らしにおける問題を抽出し、その問題を解決するために何らかの要素を改善しようとすれば、逆に悪化する要素があるという関係にある問題について、生き物の世界の解決法を提示してくれるシステムである。例えば、修理しやすいものづくりをしようとすれば、逆に、強度が弱ってしまう問題があったとする。Bio-TRIZ Warehouseを用いて、改善要素として「生産-容易性(修理)」を選択し、悪化要素として「強度」を選択し、解決原理を検索すると、1.分割原理、2.分離原理、9.先取り反作用原理、11.事前保護原理の4種が抽出される。このうち、例えば、「事前保護原理」を調べると「緊急手段をあらかじめ準備しておいて、物体の低い信頼性を補う」という解説が表示され、ある程度の原理を理解できる。次に、この解決原理にリンクされている生物の技術に、例えば、「ミツバチの巣を守るプロポリス」がリストアップされる。プロポリスはミツバチがいろいろな植物から集めてきた樹脂のような粘り気のある液体と自分達が分泌する唾液や蜜ろうを混ぜたもので、巣を覆い微生物の侵入を寄せ付けない。殺菌作用もある。ハチの巣に侵入してきた敵の死体を腐らせない働きもあり、ミツバチは倒した敵の死体を保存食にすることができるという情報を簡単に入手できる。このようにこのシステムを使用すると、生物界での解決事例を短時間で見つけることができ、問題解決のヒントが得られるのである。このミツバチの解決策を理論的に見出すのは至難の業であることはすぐに理解できる。生物の凄さに驚くばかりである。