コラム96

2021年9月17日

暮らしにおける問題とは何か

 

自然から学ぶためには、暮らしにおける問題を抽出し、改善要素・悪化要素を見出し、Bio-TRIZを利用して、生き物の解決方法にたどり着くことは、前回のコラムで紹介した。本稿では、そもそも、暮らしにおける問題について考えたい。存在について考えるオントロジーの研究領域では、工学的設計における概念設計段階においては機能概念が大きな役割を果たすと言われてきた。例えば,トップダウンな概念設計では、設計物に与えられた要求機能を、それを達成できる部分機能に分解することが行われる。これは機能分解と呼ばれている。人の行為についても同様に考え、日常生活の行為について部分行為に分解することが行われる。つまり、人の行為にはゴールが存在し、そのゴールを達成するために部分行為を行っていると認識している。暮らしにおける問題とは、ゴールを達成できないことを指す。部分行為の中で不具合が生じているからである。そして、それには何らかの原因があると捉えている。その原因を取り除けば、不具合は生じなくなる。もう一つ不具合を取り除く方法として、ゴールを変えるという方法がある。ゴールを達成できないことにより問題が生じるため、ゴールを変えることにより、問題が消えるのである。もちろん、その結果、新たな問題が生じる可能性はある。このような対処法で問題解決をしたとしても、排除できない問題がある。それが受け入れなければならない制約になる。その制約こそ未来の豊かさの源泉である。