コラム104

2022年1月30日

少量多品種の豊かさ

 

現在、ある地域で行われている暮らしを紹介したい。夜中に起きて、近くの堤防にいるイシガニを取りに行く。これから濃い出汁をとることができる。パスタにするとやみつきになる美味しさである。ヤドカリの出汁も甘い。味噌汁に入れるとたまらなく美味しい。調理方法はいろいろ試している。昔であれば、食べ方と一緒に魚介類を売っていた店があったが、今はなくなったため、自分で探すしかない。このように通常は食べられていない食材が地方には溢れている。その地域では100種類以上いろいろな魚を日常的に食べている。いや、100種類は控えめな数値である。さらに調理方法もいろいろある。魚種は全体で4000種ある。豊洲には80種が卸されている。今の社会は大量消費を前提としているため、これらの少量多品種の食材は値が付かない。が、地域の人は皆欲しがって海に向かっていく。地方の人は概念的に大量生産・大量消費をもはや目指していない。地域の持続可能性のことを考えている。そこで、採れるものを如何にクリエートするか。そこがワクワクするところだという。東日本大震災の被害を受け、漁業の持続可能性に疑問を持ち、「人が食べたいものを選ぶ」という価値観から「人が海に合わせる」という価値観に変わったという。彼らにコンタクトをとってくる大企業の人は、いまだにそこに全く目を向けていないそうだ。現場を見ていない証拠だ。これが現実である。私たちは本当に賢く生きて行けるのか。