コラム109

2022年4月8日

海の三角関係

 

海の中で異変が起きている。通常、タコは伊勢エビを食べる。ウツボはタコを食べる。ところが、最近の志摩の海では、海水の温暖化の影響と考えられているが、ウツボがタコを食べ過ぎてしまい、少なくなっている。増えすぎたウツボは、今度は伊勢エビを食べ始めたのである。伊勢志摩地方では伊勢エビは名産であり、なくなっては困ってしまう。そのような情報を得たばかりのころ、ポンペイ展を偶然見に行った。紀元前2世紀のころのものだが、紀元後79年にイタリアのナポリ近郊のベスビオ山で大規模な噴火が発生し、ローマ帝国の都市ポンペイが火山噴出物に飲み込まれた。この発掘が進み、多くのことが明らかになりつつある。この噴火の頃、既にワインが飲まれ、パンが生産され、魚介類が多く食されていた。モザイクの多くの魚が描かれた絵が飾られていた。モザイクの「イセエビとタコの戦い」と題する作品である。この当時からイセエビとタコは戦っていたのである。そして、戦っているイセエビとタコのそばに、ウツボを発見した。ウツボもこの当時からいたことを示している。つまり、2000年以上も海の中では同じような戦いが繰り広げられていたことになる。これはこれで驚くべきバランスである。