コラム110

2022年4月17日

火焔型土器

 

縄文時代中期とは、およそ5500年前から4500年前の約1000年間である。新潟県笹山遺跡から出土した国宝の火焔型土器は、炎のような形の飾りがついているが、実際は何が表現されているかわかっていない。おこげがこびりついていたものもあることから、煮炊きに使われたとも考えられている。しかし、現物を見ると、私には炎には見えなかった。炎に見えるものは、海の波とそこをはねる海洋にいる生物である。日本列島に海を渡りたどり着いた縄文人がその物語を土器で表現したように見える。側面にある渦は、水の渦に見えてくる。本人なのか先祖が日本に渡ってきたときの物語を残そうとしているように見えた。しかし、その地域は新潟であり、温暖な気候だったとはいえ、雪が降ったと思われる。雪の中あるいは土の中にこの火焔土器の細い部分を埋め、上部は上に顔を出し、何らかの方法で蓋をして、冬を越すための保存食、発酵食を中に入れたのではないかと想像する。発酵食がこの当時に存在したかは不明であるが、この火焔型土器は明らかに薪の上に置くような形状をしておらず、さらに、器は鍋用にできていない。現代的には花をいけるか、栗とかどんぐりとか、保存食を入れる器の形をしている。ライフスタイル研究を行っていると、コミュニティができる頃の時代が興味深い。この火焔型土器は明らかに数名の家族でシェアする食べ物を入れる器ではない。大きいのである。また、芸術的である。誰か家族以外の人に見せるか、コミュニティの中で一緒に食事をする機会があった道具と思われる。