コラム118

2022年8月27日

都市部で起きたこと

 

地方は人口減少、高齢化の影響を受けて、活動主体が減り、活力が失われている。このような状況において、地域に残る人々は次世代のために何かをしなければならないという危機意識にある。一方、都市部ではその地域への帰属意識が薄く、不特定多数の人が住む町であるため、地域の次世代の子どものためにという感情は抱きにくく、自分の子どものために考え、行動する。しかし、コロナ禍の中、都市部で興味深い現象があった。ある高齢者施設内に草が汚く生えてしまい、手入れが行き届いていない場所があったので、コロナ禍が始まる前に、そこを綺麗にする農園プロジェクトをスタートさせた。その高齢者施設の住民とその近所の住民で新しい持続可能なコミュニティをつくる目的である。プロジェクト開始早々、コロナ禍で高齢者施設内には入れなくなったが、荒れていた土地に入り、耕し、食べ物を育てることは許可がおりた。3年間ほど黙々と農作業を続けた。住民とは会話はほとんどできない。言葉によるコミュニケーションはとれないのだが、気持ちは背中から伝わり、やがて、高齢者施設内のいくつかのグループが園芸を始めた。明らかに農園プロジェクトの影響を受けて、私たちもやろうと園芸を開始したそうだ。それを聞いた農園プロジェクトの人々は伝わったことに喜びを感じていた。ひたすら耕し続けると、新しいコミュニティが生まれるのである。この不特定多数の人が住む都市部で。コロナ禍だからこそ、発見した重要な効果だと思う。