2020年12月18日
Backcastingからバックキャスト思考への道のり~ゴールは与えられるものではない~
Robinson J.B(1982)のEnergy backcasting A proposed method of policy analysisと題する論文によると、backcastingの第一ステップに(1)Specify goals and constraintsが挙げられている。これは後に訂正されていくのであるが、私は先にこの論文を読んでいたため、ゴールと制約が同時に書かれていることやゴールの特定方法に悩んだ。Backcastingが未来のゴールに向けて踏み出す第一歩を示す手法であるため、ゴールは誰かが書かなければならない。どのような方法でゴールを描くのか、これは重要な問題であり、最も大事なプロセスであることは明らかである。そして、「ゴールと制約」という語順も違和感があった。「制約とゴール」ならわかる。制約を根拠にゴールが決まるのか、ゴールが根拠に制約が決まるのか、どちらもあり得るため、そこから一歩も進めなくなった。ゴールを描くことが難しいのは一目瞭然であり、制約を考えるのはCO2排出量を削減するなど容易に想定できる。そこで、私は考えられる将来の環境制約を列挙し、その制約の下、ゴールを設定することを考えた。次の問題は、ゴールとはどのような形式で表現すれば良いのかである。論文に紹介されている事例を見ると、「再生可能資源」、「ソフトテクノロジー」、「エネルギー生産の分散化」であった。一つ目は物質、二つ目は技術、三つ目は概念や方向性である。これも私を混乱させた。これらの言葉の先にゴールがあるように思えたからである。利用資源を置き換えるのは部分的な話、テクノロジーを置き換えるのも部分的な話。分散化は方法であって、その結果、何らかの状態になるわけで、個人や社会のゴールではない。部分最適化に過ぎない。そこで、私はゴールの形式として、資源、テクノロジーを利用した上位概念にあたる暮らし方に着目した。ここから思わぬ方向へと展開していった。