コラム69

2020年7月30日

90歳が私に伝えようとしたこと~遊び心~

 

90歳の方々は遊び心が満載である。あるテレビ番組の90歳ヒアリングの取材の時のこと、これまでに川でおぼれている人を救ったことが3回くらいはあるという話になった。人が流れてきたので、救ったのだという。かわいそうだったので、着替えをするために家に連れて帰ったのだ。人の命を救うといういい話だったので、聞き手側はその話に引き込まれてた。カメラがゆっくりとその方に近づき、ぐっとその方の顔にクローズアップしていった、その時である。90歳の方が「次の瞬間、その女性の着物がハラリと落ちて、全部見えてしまった、驚いたよ。わっはっは。」と大笑いしていた。結局、そのシーンはテレビで使われることがなかった。カメラマンはやられたという顔をしていた。他にも、「昔は、蛍をとって、家に持ち帰り、夜に蚊帳の中に放すと綺麗に光るんだよね。」という話があると、聞き手は、「次の朝どうなっているのですか?」と尋ねると、90歳の方は笑顔で、「皆死んでるよ」、とあっさり言うのである。ネガティブな話を瞬時にポジティブにしてしまうのは、制約の中で豊かさを求めていた証拠だと思う。90歳の方にお会いする時はいつも、「遊び心を持ちなさい」と言われている気がする。