2020年6月22日
90歳が私に伝えようとしたこと~ポジティブに捉えること~
戦前の暮らしは、今の暮らしと比較すると不便であった、というのは利便性という側面のみで評価をしている表現である。90歳の方々は、「毎日の水汲みは大変だったが、水場で同世代の人と会えるから楽しみだった。」「友達と数時間歩いて神社参りをしたものだ。1日がかりだったけど、それが楽しみだった。」「干し柿をつるすのは手が痛くなるほど大変だったが、つるし終わった時の綺麗な色が広がるのを見た時は本当に安心した。」というように、辛いことのそばにある心の豊かさを必ず指摘する。物事をポジティブに捉えようとするのである。作業をしながら歌う労働歌も同様である。辛い単調な仕事をポジティブなエネルギーに変える工夫が随所にある。これらは長い間辛い経験を乗り越えてきた人々が暮らしの中に埋め込んできた暮らしの知恵である。90歳の方々は常に必ず物事の良い面悪い面を見ていた。「昔の暮らしと今の暮らし、どちらが良いですか?」という愚問に対して、「どちらも素晴らしいですよ」ということが、90歳が私に伝えようとしたことであったと思う。どちらの世界でも豊かさを見出せるということであろう。