コラム65

2020年6月8日

90歳が私に伝えようとしたこと~一期一会~

 

戦前の暮らし方を調査するために、日本全国に在住の90歳前後の方々へヒアリングを実施してきた。最初に始めたのが2008年冬なので、11年が経過した。その当時90歳の方は今ご存命であれば100歳を越えている。彼らが語る話の中心は、もちろん、戦前の日本の暮らし方である。今年からそれらの証言を残すために、本を書き始めている。600名以上の方々の暮らしに触れてきた。毎回、夢中で話を理解するよう一語一句逃さないように話について行こうとした。気づいたら、自分はいつも興奮状態になっていた。一通りの話が終わろうとするころ90歳の方々のやさしさを感じる。最後、お別れをするときに、「忘れていたことなのに、思い出させてくれてありがとう」「話を聞いてくれてありがとう」と私の訪問について心から感謝される。そして、「また来てね」とは言われない。お互いこの2時間が「一期一会」であると理解しているからだと思う。感謝の言葉がお別れの言葉であった。暮らし方の基本中の基本を教わった気がする。このような90歳ヒアリングに関して、10年経過しても気になって離れない言葉や90歳の方々が私に伝えようとしたことについてしばらく連載して、持続可能なライフスタイルについて考えていきたいと思う。