コラム55

2020年1月14日

生き方と生活様式の違い

 

ライフスタイルデザインという言葉は私が使いだした言葉で、エコデザインという物に対する環境配慮を伴うデザインでは十分ではないことから、物とそれを使う行動や価値観を含めたライフスタイルデザインという概念を導入した。ライフスタイルは日本語では生活様式という言葉が使われる。生き方や生き様という言葉もあるが、これはこの文脈ではライフスタイルではない。オントロジー工学を利用して人の生活シーンを明示化すると、生活シーンは行為(行動)と方式(方法や技術)に分解できる。これを行為分解木と呼び、ゴールを達成するためのツリー状の行動と方式の関係を明示化できる。上位の行為は下位の行為と方式を概念化したものであり、この行為分解木を制作するプロセスで日常生活にある概念が明示化されていく。ライフスタイルという生活様式も概念であることから、行為分解木で明示化できる。行為分解木のリーフと呼ばれる枝葉の行為は具体的に人がゴールを達成するために行動する内容となる。下位の方に、例えば、CO2を排出する方法で移動する等の環境負荷を与えるプロセスが明示化される。これが生活様式である。上位には旅行するや楽しむのようなCO2排出が明示化されていない概念が並ぶことになる。旅行するのは何のためか、楽しむのは何のためか、それを明示化していくと上位にはその人の生き方や生き様という言葉に近づく。ライフスタイル変革に必要なのは、実は上位の概念の転換ではなく、中位から下位における環境負荷を与える方式や行為の部分の転換なのである。